長期休暇が取れる環境

9月にして少しずつ紅葉が見られるようになりました。朝晩は冷え込み始め、コートが必要な時もあるくらいです。これからあっという間に冬がやってきます。

スウェーデンでは夏に長期休暇を取るのが通例ですが、なぜ取れるのか、ということを考えてみたいと思います。私はよくスウェーデンの企業は12ヶ月ではなく11ヶ月でまわっているとお話しします。つまり、夏休みを取る1ヶ月はカウントしないのです。それでもうまくまわっていくのはなぜでしょうか。

日本でもワークライフバランスが叫ばれ、長時間労働を減らそう、長期休暇を取れるようにしよう、という動きが盛んになっています。仕事漬けになることで思考回路が停止し、仕事を改善したり新しいアイデアを出すことが困難になります。そうなると仕事がつまらなくなり、発展もしていかなくなりますので、適度なリフレッシュは必要です。

スウェーデンでは夏に長期休暇を取りますが、休暇を取り終えた後の職場はとても元気いっぱいになります。1ヶ月も休むとかなりリフレッシュできるので、新しいアイデアも出てくるようです。私のまわりはクリエイター関連の人が多いのですが、クリエイターにとってはクリエイティブ力が全てです。クリエイティブ力は考えてでてくるものではなく、日常のふとした瞬間に出てくるものだそうです。特に休暇中にはさまざまなアイデアが思い浮かぶそうで、休暇しながら仕事にもつながっているのです。つまり休暇を取ることで仕事が充実していくライフ・ワーク・シナジーになっていくのです。このようなライフスタイルは理想的だと思っています。

さて、それではスウェーデンの長期休暇はどのように実現できているのでしょうか。一般企業では通常年5週間の有給休暇を認めていて、ほぼ全ての人がこれを取得します。病気で仕事を休む場合は別の休暇適用があり、有給休暇はあくまでもリフレッシュするためのものです。多くの人は6月中旬から8月中旬の間に取得し、この期間スウェーデンでは夏季シーズンとして交通機関の本数が少なくなったり、お店の営業時間が短くなったりします。有名レストランはほぼ1ヶ月閉めるところも多いのです。夏季に通常通り営業しているところはツーリスト目当ての場合が多いようです。通常業務の質もかなり落ちてきます。スーパーマーケットのレジがモタモタしたり、郵便局で荷物を送るのに戸惑ったり、店頭の商品が品切れになったり、オンラインショップの商品が届かなかったりします。仕事の連絡が取れなくなる人も続出しますが、この期間は夏休みということで、仕事の質が低下しても許容されるのです。日本の仕事関連の方々には、7月は仕事になりませんよ、とよくお話しをしています。分かっている方々は仕入れなどの準備を早めにしておき、この期間を乗りきっています。

日本では何でも時間通りに進み、店頭の商品が品切れになることなど、通常は考えられないことかと思います。しかし1ヶ月くらい不便になったとして、日常生活にそれほどの支障はあるのでしょうか。商品が全くなくなるわけではないので、生活が困ることにはなりません。ただ少々不便になるだけのことです。このような少々不便になることを受け入れることが、長時間労働を減らし、長期休暇や両親休暇の取れる環境になるために必要なことなのではないでしょうか。

大震災の影響で、日本人のライフスタイルへの考え方も変わってきていると思います。便利な暮らしよりも、多少不便でも相手を思いやれる暮らしの方がもしかすると心地のいいかもしれません。人々が自分にとって心地のいい暮らしが何なのか、真剣に考えていければいいのではないかと思っています。

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