ミッドセンチュリー時代に活躍したスウェーデンの巨匠デザイナー、オーレ・エクセル。 名前を知らなくても、ココアアイズという目玉のロゴを知らないスウェーデン人はいません。今のスウェーデンデザインの礎を築いた偉大な方ですが、すでに過去の人であり、あまりフューチャーされることもありませんでした。しかし最近はちょっと変化が起きています。スウェーデンの老舗テキスタイル企業アルメダールスが、今年1月のインテリアフェアFORMEXでオーレ・エクセルのシリーズを発表しました。そして上記画像のRETROという北欧ヴィンテージ誌の最新号では、オーレ・エクセルの本の装丁を特集しています。5ページに渡る特集では、RETRO誌が独自に選んだものと、オーレ・エクセル夫人ルーセルさんの思い出の残る装丁が選ばれています。特に同じ本の装丁を年代に分けて3回手がけているものは興味深いです。中年くらいのスウェーデン人にとって、オーレ・エクセルとは昔のグリコのおまけのような、どこか懐かしい響きがあるようです。チョコレート会社マゼッティの懐かしいイラストに心躍らせる中高年世代は多いようです。
アルメダールスが商品化したデザインは、今まで世間に出ることのなかったものが多く採用されています。特に下記の「Italiensk blomsterhylla(イタリアンフラワーシェルフ)」というイラストは、オーレさんが2007年に亡くなってしばらく経った最近になってルーセル夫人が納戸で見つけたもので、ルーセルさんが初めて目にしたイラストだそうです。いつ描いたのか、何のために描いたのかも分からないという曰く付きのイラストですが、アルメダールスが気に入って商品化へと採用されました。良く見ると植物が人の顔になっていたり不思議な形をしていて、オーレさんらしいファンタジーにあふれる作品です。
もう一点の下記のイラストは、友人の60歳のお誕生日にプレゼントしたイラストだそうです。鳥が文字となってお祝いしている様子が描かれています。このイラストは主にメーター売りの生地の柄として採用されました。
下記のトレイは「Ordning & Reda(整理整頓)」という、さまざまなキャラクターの鳥を整理整頓をテーマにして寄せ集めたものです。肖像画を描くのが苦手だったオーレさんは、鳥をモチーフにするとどんなキャラクターでも描き表せたそうで、その特徴を表現した鳥が集まっています。hantera(取り扱う)、stänga(閉じる)、transportera(輸送する)、öppna(開ける)、informera(知らせる)、exponera(晒す)、servera(給仕する)、förvara(保管する)、identifiera(識別する)、kasta(捨てる)、というキャラクターをあちこちから寄せ集めてプレートにデザインされたもので、オーレ作品とアルメダールスの傑作と言えるでしょう。
一方日本でも一生懸命にプロモーションしていただいているおかげで、少しずつオーレさんの商品を目にするようになりました。オーレさんのイラストをアニメーション化したDVD「Olle Eksell in Motion」が発売された記念に、神戸のマルカさんでは「オーレエクセルフェア」を開催中です。アルメダールスの新しいオーレ・エクセル商品も取り扱っています。リサ・ラーソンのようなメジャーになるのは難しいですが、少しでもオーレさんの功績やステキなイラストを目にする機会が増えることを願っています。