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スウェーデンにはほとんど専業主婦がいません。まったくいないわけではありませんが、そのほとんどは移民が多いようです。スウェーデン女性には、専業主婦という選択肢がほぼないようです。スウェーデン語で専業主婦を「Hemmafru」と言い、英語の「Housewife」と同意です。1960年代以前は専業主婦は存在したそうですが、70年代に女性の社会進出が進んで以降は、ほとんど聞かれなくなりました。女性の社会進出が叫ばれている昨今の日本と同様の事態が、70年代のスウェーデンで起こったのです。
70年代にスウェーデンで女性の社会進出が進む際には、さまざまな議論や改革が進められました。育児休暇期間の収入を保証する両親保険制度が始まり、両親ともに育児に参加する男女平等のあり方は、その後の政策で最も重要な課題となりました。1974年に導入された両親保険制度の背景には労働力不足と男女平等議論があり、国は高等教育を受けた女性の能力を必要としていました。国民の半分にあたる女性が労働力外にあることは国の損失であり、税収の増加にもつながる女性の社会進出は、その後の社会福祉を充実させるためにも必要不可欠な課題でした。
スウェーデンは、何よりも「個人の自立」に重きをおき、いろいろな政策やシステムが「個人の自立」につながる仕組みになっています。個人とは、年齢、国籍、性別、障がいなどを超えた、全ての人が対象です。
個人の自立を最も尊重するということは、個人の自由を尊重することです。これはとても素晴らしいことですが、同時に個人の責任が大変重くなります。たとえ結婚していようと、パートナーに生活を委ねることはできません。
日本人とスウェーデン人のカップルや夫婦は最近特に増えていますが、よく肝に銘じてほしいのは、日本とスウェーデンとでは夫婦のあり方が全く異なることです。この国では、慰謝料という考えがないそうです。例えば、どちらかが浮気や個人的な理由で離婚したいと言い出した場合、その言い分が通り、慰謝料を支払う必要もなく、裁判にかける必要もなく、簡単に実行できるそうです。個人の自由を尊重するため、結婚という契約も一方が解約したければ簡単にできるのです。子供がいる場合、子供が18歳になるまでは共同親権なので、離婚で子供の親権で争うことはありません。親は子供は養うけれど、パートナーを養う義務はないのです。
「個人の自由を尊重する」ことこそが、専業主婦がいない最も大きな理由です。いつ放り出されるかもわからない結婚生活で、自立できない専業主婦は生きる術がありません。もっとも、自立していない女性も男性も相手からはよく思われないので、スウェーデン人の中に自立していない人はほとんど存在していないといっても過言ではないでしょう。
つまり、依存体質の人はスウェーデンでは生きられません。一方、自立体質の人は、国籍、性別、年齢に関係なくチャンスがありますので、のびのびと生きることができます。個人の自由が尊重される社会は、それは居心地のいいものです。しがらみもなく、自分の人生を思い切り堪能できます。そんな人生を歩める社会は、人として最高の幸せかもしれません。