ただいま、日本のテキスタイル業界とデザインについての情報交換を進めています。先日スウェーデン人デザイナーに会いに、日本からテキスタイル業界の方々がストックホルムを訪れました。そこで何人かのデザイナーにプレゼンテーションをしていただきましたが、日本とスウェーデンでのデザイナーに対する考え方の大きな違いを感じました。
日本のテキスタイル業界では、大手企業の下請け業者が多く、素晴らしい手仕事や品質の高い仕事は、下請け業者が請け負っていることが多いようです。しかしながら、下請け業者の名前が外に出ることはないそうです。また、デザイナーに関しても同様で、よほど有名なデザイナーでない限り、日本ではデザイナーの名前もほとんど外に出ないようです。そのことが、デザインを仕事にしている人に、自分の存在をアピールする形を取ることに固執してしまい、デザイナーとクライアント、メーカーの関係性が、うまく作用しない原因なのではないかと感じました。一方有名デザイナーを起用する場合は、デザイナー名ばかりが大きく取り出されるようで、それぞれの立場の人々が意見を交わしながらものづくりを進めていくという形が取りづらい体制なのかもしれません。
スウェーデンでものづくりをする場合、クライアントがターゲットグループや商品群を決め、デザイナーはそれに従って商品の形を整えてて行きます。画像は「花のワードローブ」をテーマとした、イケアのさまざまな形のかびんシリーズです。小さな花から大きな花まで、どのような花にでも対応できる花のワードローブになるかびんというテーマを受けたデザイナーは、著名なフラワーアーティストに助言を受けながら、形を整えていきました。この仕事は、AmsellBerlinという、スカンジナビアン・パターン・コレクションで一緒に仕事をしているデザイナーのプロジェクトです。
この仕事についてプレゼンをしている中で、彼女たちの口から「民主主義なデザイン」という言葉が出てきました。「民主主義」はスウェーデンでとても大切にされている方針で、その意思決定は構成員全員の合意により行われます。平等な精神を持ち、全員の意見を反映させる姿勢を持って仕事を進めます。イケアの仕事でも、デザインマネージメントをイケアが行い、デザイナーの意見を反映させながら、プロジェクトを進めていきます。フラワーアーティストという専門家の意見を聞くことで、より使い勝手のいいかびんの形が考えられていきます。ここでデザイナーは自分の名前を売り込もうという考えは一切なく、誰もがいい商品を作るという一点に焦点を当ててプロジェクトを進めていきます。最終商品には、もちろんデザイナーの名前が出されます。あえて隠されることはないので、デザイナーも気負うことなく仕事を進めることができます。
日本のテキスタイル業界も、今後はスウェーデンのような民主主義な形でものづくりを進めていきたいとのことで、私たちは3月に行われるテキスタイルのシンポジウムに、デザイナーと共に参加します。デザイナーの口からも、民主主義のデザインについて説いてもらえると面白いのかもしれません。そして日本のテキスタイルが、世界最高レベルであり、自信を持って世界に出ていけるということも、強く伝えていきたいと思っています。