北欧デザイナーの巨匠スティグ・リンドベリの傘


出典 spiral

 

青山のスパイラルマーケットにて、8月21日から9月18日まで、北欧デザイナーの巨匠、スティグ・リンドベリの傘を製造販売している槙田商店さんが出店されます。

槙田商店さんは、繊維業が盛んな富士吉田で、創業140年以上の歴史のある先染めのジャガード織りと、熟練した職人の手作業によりひとつひとつていねいに傘を作られている老舗メーカーです。


槙田商店さんのウェブサイト

 

富士山の麓にあり、良質な水が豊富な富士吉田は、古くから繊維産業を地盤産業としています。

現在はジャパンブランドと地方創生事業の支援を得て活動をしており、その活動のひとつとして、スウェーデンのデザイナーとの交流を持つために、富士吉田の次世代を担うメーカーの後継者らが、2015年にスウェーデンを訪れました。

富士吉田の繊維産業は、ダンヒル、アクアスキュータム、ポールスミス、ポールスチュワートなど、世界のそうそうたる有名ブランドの生地や裏地などを作り、大手ブランドを支えてきました。三宅一生からの難しい注文の生地を作り上げたメーカーもあります。

そんな優れた技術を有する一方で、長い間流通業下請けとして存在し、その名が表に出る機会はありませんでした。それは、まるで「千と千尋の神隠し」のように、名前をなくして主人のためにひたすら働く姿に似ていると表現されていました。

 

それでも大手企業の下請けとして、安定した受注を受けていました。

しかしながら、近年は安価な輸入品の流通とともに大手からの取引も減少しており、自分たちで仕事を見つけていかなければ、生き残れなくなってきているそうです。廃業してしまったメーカーもあると聞きます。

そのような状況は、富士吉田の繊維産業に限らず、多くの伝統的な技術を持つ老舗メーカーも同じです。

伝統技術を持つ老舗メーカーのものづくり産業への振興が望まれ、地方創生事業の支援を得て活動が広がっています。

2016年3月には、富士吉田の呼びかけにより、 国内の繊維産地や流通関係者等が一堂に会し、日本の繊維産業を盛り上げていくためのサミットが 富士吉田で開催されました。

今後は海外にも発信していくという意味も込めて、フランス人デザイナーとともに、スウェーデンデザイナーも招致されました。

その後、いろいろな試行錯誤がありましたが、昨年の2016年に、スティグ・リンドベリ生誕100周年のイベントが東京で行われた際に、リンドベリの傘を作る企画が持ち上がり、さまざまな困難を乗り越えて形となりました。


出典 アンドフィーカ

 

富士吉田繊維サミットの際には、私たちも富士吉田にある工場見学をさせていただきました。

槙田商店は、先染めの自社工場と、傘製作所とを敷地内に持っています。

先染めとは、糸を先に染めて、模様に合わせて織り込んでいくジャガード織りのことです。

これは、後染めと言われる生地の上にプリントするのに比べ、相当な手間のかかる製法です。

リンドベリの傘の生地も、先染めの製法で作られたため、正確な色合いや表現を織りあげるのに、何度も試作を繰り返し、大変苦労されたそうです。

ようやく完成した生地を使い、今度は傘の仕立てが始まります。

出典 槙田商店

 

槙田商店さんの傘づくりは、裁断から縫製まで、熟練した職人の手により、ほぼ手作業で作られます。

傘になる三角形の生地は、美しい仕上がりになるように生地の位置も考えながら、木製の型に合わせて手で裁断されます。

年季の入った木製の型は傘のサイズによって微妙に異なり、手作業で作られたそうです。

裁断された生地をひとつひとつ専門家が目で確認し、傘へと縫製されます。

縫製作業もミシンを使っての作業になり、最後の傘の柄付けも手作業です。

本当に手の込んだ作業が続きます。

現在スティグ・リンドベリのライセンス契約は息子のラーシュ・リンドベリ氏が引き受けていますが、なかなか簡単に首をタテに振らないラーシュ氏が、大変満足したという傘が仕上がりました。

このように、海外の美しいデザインと、日本の優れた技術とのコラボレーションで、新たな製品が誕生するのは素晴らしいことです。槙田商店さんには、今後も素敵なデザインの職人堅気な傘を作り、世界に羽ばたかれることを願っています。

 

青山のスパイラルマーケットでは、そんな傘の実演もご覧いただけるようですので、ウェブサイトをお確かめの上、お出かけになってみてはいかがでしょうか。
(画像をクリックするとサイトがオープンします)

 

 

 

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