日本の総選挙は与党の圧勝に終わりました。昨今の安倍首相の評判を見聞きし、もう少し自民党の支持率が下がるかと思いましたが、そうはならなかったようです。
総選挙というといつも気になるのが投票率ですが、今回は53.6%だそうです。前回よりも上がったようですが、それでも50%台というのは低い率だと思います。せっかく与えられている投票権を使わない人が多いのは、なんとももったいないことです。
海外在住者は、在外投票をすることができます。通常の投票日より1週間ほど早めに締め切られるため、公示が始まってすぐに投票しなければならない慌ただしさはありますが、せっかくの投票権なので、欠かさずに行くようにしています。
日本の投票では、投票用紙に政党名または立候補者の名前を記入します。鉛筆で記入しますが、字を間違えないようにとか、読めるように書くとか、かなり緊張しながら丁寧に書いています。そこで思ったのが、スウェーデンの投票との違いです。スウェーデンでは、投票したい政党のカードを選び、それを封筒に入れます。立候補者を選ぶ場合は、名前が書かれた用紙にの名前の欄をチェックするという形で、自分で政党名や立候補者名を書くということがないため、緊張しながら文字を書くということがありません。
スウェーデンは4年に1回総選挙が行われますが、来年の2018年が次回の総選挙です。そこで、4年前の2014年に行われたスウェーデンの総選挙について、ちょっと書いてみようかと思います。
スウェーデンでは移民にも投票権があります。スウェーデン国籍を持っていれば、国議会、州議会、市議会の全ての投票が可能です。私の場合はスウェーデンの国籍は持たず、住民権だけなので、州議会と市議会の投票ができます。
選挙が近づくと、テレビやラジオでは毎日のように、党首討論や政策ディベートが報道されます。街中は政党のポスターで埋め尽くされていきますが、ポスターを設置する場所が決まっている上、デザインが美しいので、景観を崩すことはほとんどありません。各政党にはロゴやテーマカラーがあり、ロゴを見ただけでどの政党か分かりやすくなっています。そんなところも、スウェーデンの分かりやすいグッドデザインが見受けられます。
選挙にあたっては、各家庭に投票券が送られてきます。この投票券と身分証明書を持って投票会場に行きますが、最終投票日より早く投票することも可能です。その場合は指定された場所、例えば図書館や博物館などで投票を行います。
会場に置かれた政党と立候補者の名前が書かれたカードを自ら選んで投票しますが、会場入り口でも各政党の支援者たちが投票に来た人々に直接政党カードを手渡しています。国議会は黄色いカード、州議会は青いカード、市議会は白いカードと、色で分かりやすく仕分けされています。会場で渡された封筒にカードを入れて封をして担当者に手渡し、目の前で投票箱に入れるのを見届けて、投票は終わります。
スウェーデンの投票率は80%を超え、国民が国政に高い関心を示していることが伺えます。特に若い世代の投票率が高い理由は、学校選挙が実施されるからかもしれません。学校選挙は実際の投票に反映されるものではありませんが、総選挙に先駆けて学校内で模擬投票が行われます。生徒たちは選挙のやり方を学ぶだけでなく、民主主義を通して政治に積極的に参加することを学びます。高校生が友人たちと選挙について熱く語り合うことも珍しいことではありません。
2014年の総選挙の大きな注目は、それまで8年間続いた穏健党の政権がそのまま続くのか、社会民主労働党が巻き返して福祉大国に戻るのか、大きな関心を集めました。
結果は社会民主労働党がわずかに穏健党を上回り、8年ぶりに政権交代となりました。しかし社会民主労働党は過半数を超えていないため、連立政権となりました。2014年の10月初めには、閣僚の半数を女性が務める新政権がスタートしました。今回政権交代となることは予想ができましたが、スウェーデン民主党が13%近い票を集め、社会民主労働党、穏健党に続く第3政党になったことは世間を驚かせました。
スウェーデン民主党は移民に反対する小政党で、極右政党と言われています。2010年の総選挙で初めて国政議席を獲得し、2014年は第3政党へと大躍進したことは大きな驚きでした。この結果は国民が移民を抑えたいという意識の表れなのかもしれませんが、翌日にはスウェーデン民主党の躍進に反対するデモ集会がありました。平等な社会を目指す多くのスウェーデン人にとって、スウェーデン民主党の躍進は好ましくない現象のようです。
さて、そんな騒動があった前回の総選挙ですが、来年に総選挙を控えたスウェーデンは、難民問題がますます大きな課題になっています。いわゆる弱者に優しい社会民主労働党が、このまな政権を続けられるのか、はたまた政権交代になるのか、今からどうなるか気になります。私も来年の投票に向けて、スウェーデンの政治動向に目を向けて行こうかと思っています。