Photo: Christofer Dracke/Folio/imagebank.sweden.se
6月はスウェーデンの卒業式の季節です。特に高校の卒業式は人生の節目ともいえるイベントで、家族ぐるみで子どもの成長を祝います。卒業生の子どものころの写真のパネルを掲げた家族たちが学校に集まり、卒業式を終えた学生たちが出てくるのを待ちます。白い学生帽をかぶった卒業生たちは、卒業式の後にクラスごとにトラックに乗って街中をめぐり、その後に家族とのお祝いの席に向かいます。
私も知り合いの卒業祝いの集まりに行ってきたのですが、集まってきている人々がスウェーデンの家族のあり方を物語っていましたので、その様子をお話ししたいと思います。
卒業祝いに集まった卒業生の両親は離婚していますが、その両親と現在の家族たちがお祝いに集まりました。卒業生の父親方では、現在の父親の妻、娘(卒業生にとって腹違いの妹)、妻の連れ子、そのガールフレンド、父親方の妹家族、父親方の祖父母がやってきました。卒業生の母親方では、現在の母親の夫、夫の成人した連れ子、母親の弟家族、母親方の祖母がやってきました。それに加えて友人たちもいましたので、総勢30名は超えていました。
この家族は子どもたちのお誕生日パーティにもこのように親戚たちが集まります。子どもが3人いますので、そのたびにこれだけの人々が集まることが多いようです。
離婚の多いスウェーデンですが、子どもの親権は共同親権となりますので、離婚後の親権を争うことはありません。その代わり、離婚した後も子育てには両親が関わってきますので、二度と会わないということはできません。つまり、二度と会いたくない泥沼状態になる前に別れることが多いようです。
再婚した相手の子どもを日本語では「連れ子」と言いますが、スウェーデンではボーナスキッズと言います。歓迎したい存在であり、とてもいい表現だと思います。スウェーデンの家族は、離婚すると家族が増えるといわれています。つまり、離婚した両親がそれぞれ再婚すると、新しい家族が増えると考えます。両親は離婚した後もお互いに予定を取り決めて双方で子どもを育てていくため、どちらかが養育費を支払うこともありません。
親戚の集まりで、私が何よりもステキだなと感じたのは、別れた両親の再婚相手やその家族を含めて皆が会う機会があり、関係が良好なことです。離婚した両親の新しい連れ合いやその連れ子同士が会うということは、日本ではあまり考えられないことではないでしょうか。
誰もが自立を目指しているスウェーデンには、離婚の際の慰謝料という考えがありません。例えば、一方に新しい相手ができて別れたいという場合、そのままその意思が通ります。専業主婦が少ない理由はそこにもあるようです。いきなり夫に別れたいと言われることがありえますので、専業主婦では生活ができなくなる恐れがあるからです。ある夫婦は、長く一緒にいすぎたから別れよう、という理由で離婚になったそうです。共同親権のため、子どもを理由に離婚を留まることは少ないようです。
誰もが自立している社会とは、誰もが自分の意思で自由に生きるべきである、ということです。そこに誰かへの依存はなく、他人の人生を束縛することもありません。自立している自由というのは、もしかすると最高に幸せな生き方なのかもしれません。
日本の家族のあり方を基本に考えていると、スウェーデンの家族のあり方は目からウロコのようなことがたくさんあります。両親の離婚は子どもにとって悲しいことかもしれませんが、離婚後もよい家族関係を築けるのであれば、決して悲しい選択ではないようです。自分を気にかけてくれる人が多いことは、子どもにとって嬉しいことですね。