月曜日の12月10日に、今年のノーベル賞授賞式と晩餐会が開催されました。
この日はアルフレッド・ノーベルがイタリアのサンレモで亡くなった日です。ノーベル授賞式から晩餐会まで、この日に飾られる花はすべてイタリアのサンレモから届いています。
今年は京都大学の本庶特別教授がノーベル生理学賞を受賞されたことで日本でも話題になっていますが、10日の授賞式と晩餐会の様子は一部始終ライブ放送され、スウェーデン国民の関心の的となります。この日初めて公開されるディナーのメニューや、王室や参列者が身につけるドレスについての解説もあり、特にドレスへの関心は高まります。
今年は環境に配慮したドレスと、授賞式から目立っていた派手なドレスが注目の的でした。
環境に配慮したドレスの筆頭は、ヴィクトリア王太子です。サーモンピンクとグレイのコントラストがファンシーなドレスは、なんと23年前の1995年に母のシルヴィア王妃がノーベル晩餐会で身につけたドレスでした。後ろの大きなリボンや、ピンクとグレイの配色がモダンな印象のドレスは、23年前のニナ・リッチのデザインです。時代を超えて、母娘で素敵に着こなしています。
ヴィクトリア王太子(左)と23年前のシルヴィア王妃(右)が身につけたドレス
後ろ姿のリボンが魅力的です
もうひとつ環境に配慮した高感度の高いドレスは、アリス・バーン・クーンケ文化大臣が、スタッドミッション/Stadsmissionのリサイクルの生地で作ったドレスです。
スタッヅミッションはリサイクルショップとして一般の人々が不用品を持ち寄り、それを販売することで利益を得て、その利益をホームレスや経済的に苦しい学生らへの援助に使っている支援団体です。
スタッヅミッションではRemakeというリサイクル生地を使ったブランドを持ち、商品を製造販売していますが、そのRemakeがクーンケ文化大臣のドレスをデザインしました。リサイクル生地を使ったドレスをノーベル賞に着ていくとは、なんとも気の利いた配慮です。ドレスは端切れを縫い合わせていますが、デザインが工夫されていて、リサイクルには見えませんでした。
Remakeでドレスの仮縫い
ノーベル晩餐会でのアリス・バーン・クーンケ文化大臣
そして、今回の全ての人の度肝を抜いた注目度ナンバーワンは、スウェーデンアカデミーのサラ・ダニウスのショッキングピンクのドレスでした。
スウェーデンアカデミーはスキャンダルで今年のノーベル文学賞が見送りになったこともあり、サラ・ダニウスはノーベル財団のメンバーとして参列したようです。ノーベル賞授賞式からひときわ目立つドレスに身を包んだ彼女は何を思ってこんな派手なドレスで登場したのでしょうか。サラ・ダニウスのドレスはさっそく話題の的になりました。彼女はいつもノーベル晩餐会で派手なドレスを身につけますが、今年は特に派手さが際立っていて、ノーベル受賞者よりも、王室よりも、誰よりも目立っていました。
特に授賞式は厳かに行われる場であり、彼女のショッキングピンクのドレスは、ちょっと場違いな印象も与えていたように思います。とはいえ、スウェーデンアカデミーの存在感を示すような彼女の勇気に賞賛する声もあるよったです。
ノーベル授賞式でのサラ・ダニウス
ノーベル晩餐会に入場するサラ・ダニウス
サラ・ダニウスのドレスについては賛否両論がありました。多くの女性陣はドレスの美しさを褒め称えていたようですが、やはりノーベル受賞者や王室よりも目立つのはどうしたものか、という反応もあったようです。
ちなみにドレスのデザインはスウェーデンのモードデザイナーで王室のドレスも担当しているパール・エングスヘデン/Pär Engshedenです。サラ・ダニウスはノーベル晩餐会に彼がデザインしたドレスを5年続けて身につけているとのことで、今年のドレスは特に自分の強い意志を込めて、スウェーデンアカデミーはスキャンダルに屈しないという姿勢を主張したかったのかもしれません。
ノーベル賞のイベントは世界的にも注目されるので、その場で身につけるドレスには、さまざまな意味が込められています。