北欧デザイン界が目指す先が見えてきた

「北欧デザインはどこに向かっていけばいいのか」

これは最近の私にとっての最大のテーマですが、

北欧デザインに起きている新しい変化とは」という記事を読んで

はっきりその目指す方向が見えてきたように思います。

当記事では、9月中旬に開催されたフィンランドデザインウィークについて書かれています。

フィンランドデザインウィークのコンセプトも、

8月にストックホルムで開催されたインテリアフェアFormexとほぼ同じく

「サステイナブル」であることです。

フィンランドデザインウィークでは

地球環境や労働環境に配慮したデザイン業界の未来を考える企画の多かったそうです。

以下は記事からの抜粋です。

「北欧では、環境や気候変動問題に対する市民の関心が高い傾向にある。

「北欧デザイン」の新要素は、サステイナブルであることだ。

商品を増産し続け、消費社会が続くことは必ずしも環境に良いとはいえないため、

デザインやファッション業界は大きな転換を求められている。」

 

サステイナブルへの関心は今に始まったことではありませんが、

今まで以上にその傾向が強まり、真剣さが高まったと感じます。

このところ世界的に有名なスウェーデン人として世間を賑わしている

16歳のグレタ・トゥーンベリさん。

地球温暖化と気候変動の阻止を求める若き活動家です。

先日は、オバマ元アメリカ大統領のフェイスブックで、

彼女と面談した映像がアップされていました。
The Obama Foundation

グレタさんが世界に影響を与えていくとともに、

スウェーデンも環境問題により真剣に立ち向かうようになりました。

 

デザイナーの本来の仕事は、自分の作りたいものを作るのではなく、

社会が求めているものを作ることです。

そして、その中に自分の強いメッセージを込めます。

今のデザイナーに求められているのは、サステイナブルな未来社会へ向けてたデザインです。

8月のFormexにてFormex Formidable(最優秀北欧デザイン雑貨賞)に

ノミネートされたデザインを見ても、その傾向が伺えます。

Formex Formidableにノミネートされる作品は、

新作であること、新しいアイデアが潜んでいること、

素材や工程も含めて全体的に興味の持てる作品であること、

時代にマッチしていることなどが審査の対象となりますが

特に最近は、サステイナブルなアイデアが選ばれるようです。

 

今年の1月に発表されたFormex Formidable最優秀賞を受賞した作品は

この記事のトップ画像にもなっている「プリーツショール」です。

リサイクル事業として25年の経験があるvan Deursというブランドが

古いスカーフのデザインを組み合わせ、プリーツ加工した商品です。

アップサイクルという、リサイクルに留まらず、なお先を行くアイデアです。

 

今回のFormex Formidableにノミネートされたのは、

van Deursの新作で、スウェーデンの伝統工芸を取り入れた

新しい感覚のブレスレットです。

ダーラナ地方のアンティークの帽子バンドのアイデアに

柔らかいトナカイの革を使ったブレスレットを作りました。

実は、本物のバンドを手作りするのは大変な時間を要します。

そのような昔ながらのスウェーデンの手仕事に敬意を評するアイデアです。

 

「ごみ収集車アイデン/Sopbil AIDEN」もノミネートされました。

Kids Conceptによる収集車をかたどった木製玩具で

紙、ガラス、金属、リサイクルマークの4つの分別箱を備えています。

何がリサイクルできるのか、どのようにゴミが収集されるのかを

子どもたちは遊びながら学ぶことができます。

 

Iris Hantverkは目に障害のある人がていねいに作るブラシのブランドで

Formex Formidableにノミネートされる常連です。

今回は、ヘチマから作られた食器洗い用スポンジがノミネートされました。

ヘチマといえば、日本では昔から使われていますね。

これこそエコでサステイナブルな素材を使った商品です。

 

ノミネート作品は11品あり、自然素材を使ったり、リサイクルだったり

サステイナブルな商品がほとんどです。

Formex Formidableでは、一般投票による審査も行なっています。

お気に入りがあったら投票してみてはいかがでしょうか。

Formex Formidable一般投票サイト

 

さて、ここまで語ってみて、北欧デザインが目指す先は、

サステイナブル、そしてアップサイクルです。

近年スウェーデンではひとりあたり8キロの生地が廃棄され

新しい服10着のうち6着が1年以内に捨てられ、

リサイクルされるのは1%以下だそうです。

テキスタイルに関しては、今この世に出ているものをリサイクルすれば

新しいものを作る必要はなくなっているそうです。

 

サステイナブルは、北欧デザイン界の最大のテーマです。

捨てられる生地に加工を加え、人々を魅了する新しい商品を生み出す、

そんなアップサイクルなアイデアがFormex Formidable最優秀賞に選ばれています。

新しいものを生み出すより、今あるものを有効利用する、

そのためのデザインを生み出すことが

北欧デザイナーたちに課せられた任務のようです。

アップサイクルなデザインで人々を魅了することが

次世代の北欧デザインが目指すべきところです。

これからもその視点で北欧デザイン界を見守っていきたいと思います。

 

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