北欧インテリアフェアFormexは、今年60周年を迎えました。
上記の写真は1960年のFormex会場です。
1960年という戦後の成長期に、北欧デザインは大きく躍進しました。
それから60年、北欧デザインのトレンドもかなり変わってきました。
時代を反映するように、元気でエネルギッシュなデザインや色が好まれたり
落ち着いたモノトーンがトレンドになったり
ミニマリズムではなくマキシマリズムが注目されたり
北欧もいろいろなトレンドを翻弄されてきました。
気候変動が心配されるこのごろは、皆がこぞって
「サステイナブル」を提唱しています。
地球に優しいのは原始的な生活であることを再認識し
自然と共存したライフスタイルがトレンドになっています。
このトレンドは北欧にとどまらず、全世界で共通しています。
グローバル化の進んだ現代、トレンドも世界共通になっています。
今回のFormexで60年間の時代の移り変わりを表現したのが
会場に展示された「60年のテーブルセッティング」です。
1960年から2020年までに、
どのようにテーブルまわりが変わっていったか
なかなか見どころのある展示でした。
会場に展示された1960年代から2020年までの
6つのテーブルセッティングをご紹介します。
スタイリストはCecilia Tivarです。
1960年代
1960年代は、戦後にやっと社会が安定し
人々は消費を熱望し、経済がどんどん成長していった時期です。
カラフルで元気を与えてくれる北欧モダンが躍進していった時代です。
ご存知スティグ・リンドベリの葉っぱが一世を風靡しました。
テーブルウェア Berså by Stig Lindberg for Gustavsberg
フィギュア Lisa Larsson for Gustavsberg
グラス Ruben by Signe Persson Melin for Kosta
カトラリー Fuga by Tias Eckhoff for Gense
1970年代
1970年代は、60年代の勢いが少し落ち着きます。
ベトナム戦争があり、失業者も増え、経済の勢いに陰りが見えはじめます。
その反面、ヒッピーなど自由な発想の人々が巷に増え
新しい若者文化が生まれます。
スウェーデンの人気グループ、アバ/ABBAが大成功を収めたのもこの時期です。
このころ人気となった北欧デザインは、タイムレスデザインとして
その後も長く愛用されています。
テーブルウェア COQ by Stig Lindberg for Gustavsberg
テーブルウェア Ruska by Ulla Procopé for Arabia
グラス Ultima Thule by Tapio Wirkkala for Iittala
カトラリー Old Farmer Classic, Gense
テキスタイル Puutarhurin Parhaat by Maija Louekari for Marimekko(2009)
1980年代
1980年代は、北欧もバブルに沸いた時期です。
マドンナが人気を博し、鍛え抜かれた身体がもてはやされます。
ポルシェやロレックスを持つ人が増え、経済が一気に高まります。
時代を反映して、北欧デザイン界にも新しいデザインが登場します。
赤など、エネルギッシュな色が人気の時代です。
ティーポットとボウル Rolf Sinnemark for Rörstrand
赤いエスプレッソカップ Keith Haring for Konitz
右側の細長いフラワーベース Neffertiti by Matteo Thun for Memphis Milano
左側の黒いフラワーベース Shiva by Ettore Sottsass for BD Barcelona
1990年代
90年代は、80年代後半から衰退しつつあった経済がますます衰えます。
90年半ばからミニマリズムも行き詰まり、
カラートレンドにも変化が現れます。
新しいブラックが毎シーズン生まれました。
ノーベル賞晩餐会用のテーブルウェアが発表されたのは1991年です。
写真上
テーブルウェア Ikarus by Gianne Versace for Rosenthal
生地 Zoffany Frank & Cordinata
写真下
ノーベル賞シリーズ、テーブルウェア Karin Björqvist for Rörstrand
ノーベル賞シリーズ、グラス Gunnar Cyrén for Orrefors
ノーベル賞シリーズ、テーブルクロス Ingrid Dessau for Klässbols
ノーベル賞シリーズ、カトラリー Gunnar Cyrén for Gense
2000年代
2000年代は新しい時代の幕開けです。
インターネットがどんどん発展していく時代、
北欧ではマキシマリズムとヴィンテージが注目されます。
デザインとインテリアにこだわる人が増え
セカンドハンドショップで買う人がいる一方、高級店で買う人もいて
人々の好みが個性的になっていきます。
テーブルウェア Potter Stefan Andersson
テーブルクロス Axlings Linne
2010年代
2010年代は、サステイナブルと気候の変動が気になり始めます。
20世紀に人気だったカラフルなものが少なくなり
手作り感のあるものや、素材感のあるものが注目されます。
カトラリーもメタルより木製や、カップやガラスもシンプルなものが好まれます。
装飾感のあるものより、シンプルなデザインが浸透していきました。
テーブルウェア、グラス、カトラリー Merci in Paris、Serax
ナプキン Axlings Linne
2020年代
2020年代は、これからの未来予測です。
ますますサステイナブルは一般的になり、
新品よりもセカンドハンドのものが好まれ
ますます消費が少なくなる予感です。
テーブルウェアはレトロ感がありますが、
ベルギーのデザイナーAnn Demeulemeesterの作品です。
2020年の2月からSvenskt Tennで発売されるそうです。
テーブルウェア、グラス、カトラリー Ann Demeulemeester for Serax
テーブルマット Afro Art
ペーパーカップ&ソーサー Cecilia Levy at Konsthantverkarna
60年間のテーブルウェアの移り変わりを見ると
2000年以降はどんどん地味になっていきます。
環境問題が深刻になっている昨今、ますます新しいものが少なくなる予感です。
ノスタルジックなデザインや環境に優しいデザイン
古いものを再生するアップサイクリングなど
環境に配慮したデザインが欠かせない時代となっていくようです。
<おまけ情報>
後になって知ったのですが
1980年代のテーブルセッティングには
1980年代にグスタヴスベリのゲストアーティストであった
ヤマモトマサオ氏のNipponというカップも展示されていました。
商品の発売が開始される前にグスタヴスベリを去ったそうで
実際に発売されたのかどうかも不明です。
私もはじめて知った名前で少し調べてみましたが
詳細はよくわかりません。
なかなか特徴的なデザインですね。