Photo: Heimtextil
北欧インテリアフェアFormexの1週間前に
フランクフルトで開催された「ハイムテキスタイル展」に行ってきました。
2年前には、パリで開催された「メゾンエオブジェ」へ行きました。
北欧インテリアを語る上で、北欧以外のトレンドを知ることは重要で
ヨーロッパの大きなフェアはどんなものかと訪ねてみました。
会場はとにかく広くて出展が多くて
ヨーロッパだけでなく、世界各国からの出展がありました。
アジアからの出展も多く、中国とインドがそれぞれ独自の会場で出展していました。
メゾンエオブジェでは日本からの出展も多かったですが
(一昨年の1月は100社の日本関連企業が出展)
ハイムテキスタイルでは日本企業の出展は少なかったようです。
全ての会場をまわるのは無理なので
気になるところだけを選別してまわってみました。
今回の訪問目的は「インスピレーション」を得ることです。
私たちは北欧のパターン事業を展開していることもあり
テキスタイルやインテリア業界の今後が気になります。
まず足を運んだのは「ハイムテキスタイル・トレンド20/21」。
「Where I belong」をメインテーマに
以下の5つのトレンドとカラーパレットが提案されました。
Maximum Glam
魅力的なライフテクノロジー
Active Urban
実用的で適応可能なソリューション
Heritage Lux
ぜいたくな歴史的遺産
Multi-local
グローバルな文化的影響
Pure spiritual
自然と神秘主義のバランス
Heimtextil trends 20/21, Photo by Heimtextil
「Where I belong、私はどこに属しているのか」
というメインテーマが表すように
今の時代はアイデンティティが複雑になっています。
特に欧米では、生まれと育ちと今住んでいる場所が
全て異なる人も少なくありません。
両親の出身地を加えると、もっと複雑になります。
「私はどこの出身」ということを
明確に答えられない人も増えていますし
答えたくない人もいます。
そんな時代は、多角的にものごとを捉えるのが重要です。
つまり、トレンドはひとつに留まらないということです。
今回提案された5つのトレンドは
それぞれがとても異なります。
この中から、自分にしっくり馴染むものを選べばいいのです。
Don’t ask Where I’m from
Ask Where I’m local.
どこから来たかを聞くのではなく、
どこにいるのかを聞いて下さい。
会場にはTaiye Selasiのスローガンがありました。
Taiyeは数ヶ国と関わりがあるマルチナショナルですが
「どこの出身か」というより
「どこにいるのか」という言葉がとてもしっくり来ると伝えています。
今回のトレンド展示会場には
「Future Materials Library/未来の素材ライブラリ」もありました。
2050年には世界の人口が100億人に近づくと言われ
素材の見直しが注目されています。
「未来の素材」と言っても、展示されていた素材は
リサイクル素材や自然素材ばかりです。
中には、何と人の毛髪までありました。
髪をとかしたブラシに残った毛髪を集めるというのです。
「残飯から排泄物まで、有機廃棄物は
有効な物質資源として再利用できますか」
「廃棄物をより独創的な方法で再利用できますか」
「今日捨てられたものは、明日の資源になりませんか」
展示品の説明には、こんな言葉が並んでいました。
もはや捨てるものを再利用しようという考えが主流となっています。
素材の提案は世界各地からあり
アジアからもありました。
日本にも面白い素材があるはずなので
日本の出展がなかったのが残念でした。
Future Materials Library, Photo by Heimtextil
サステイナブルは、ハイムテキスタイルでもキーワードです。
グリーンツアーという、サステイナブルに配慮した
出展ブースをまわるツアーがあったので参加してみました。
ひとつめは、ジーンズを再利用しているドイツのテキスタイル企業です。
次は、自然素材を染料としているポルトガル企業です。
アーモンド、ビーツ、植物を染料としていますが
まだ商品化まではいっておらず、試作品が展示されていました。
商品は、なんとも地味な色合いという印象です。
環境に優しいデザインは重要だとわかっていますが
まったくワクワクしないのは、ちょっと残念です。
サステイナブルを考慮すると、まだまだ地味な商品になるようです。
サステイナブルなデザインをもっと魅力的にしていくのが
これからの時代求められていると思われます。
さて、パターン事業を展開している立場として
どのようなパターンが出展されているかも気になりました。
北欧からの出展は、主にフィンランドからでした。
このように、パターンをその場で売り買いするのが一般的のようです。
売られたパターンは、その後クライアントにどのように使われるか
デザイナーは知る由がありません。
色を変えられるかもしれないし、デザインを調整されるかもしれません。
デザイナー名も公表されるとは限りませんし
商品チェックもデザイナーにはできません。
そのようは売り方が一般的であるパターンを
私たちスカンジナビアンパターンコレクションでは
デザイナーの名前を明確にし
ひとつひとつのパターンにタイトルを持たせ
それぞれのパターンデザインに対する思いをていねいに説明しています。
商品開発の段階で、デザイナーにはデザイン承認を得ます。
その際、デザイナーの意見も尊重します。
色合いの調整を指摘されることが多く
その時はやりとりが面倒だと思うこともありますが
商品の完成度が高くなります。
日本側だけではなし得ない美しい商品づくりのために
デザイナーたちが一役買っています。
そんな方針でパターン事業を進めているのは
私たちの誇りでもあります。
さて、「今どきのインテリアトレンドって」何だろうと
改めて考えてみました。
アイデンティティが複雑な時代
トレンドはひとつに留まりません。
今回提案された5つのトレンドは
それぞれが全く異なるもので
その中でどれが自分にしっくり馴染むかと考えると
より感覚的な「Pure spiritual」がしっくりきました。
Pure spiritual
将来の不安を抱えた今の時代は
消費することに敏感になり
古代の神秘的な考え方や自然とのふれあいを求め
テクノロジーは良いことのために使いたいと考える。
落ち着きを求め、より深い繋がりを求め
心から美しいと思えるものを求める。
人間が環境に及ぼす影響の重大さを認識し
より自然界に焦点を当てた暮らしをしなければならないことを実感する。
今回のハイムテキスタイル訪問で強く思ったことは
サステイナブルデザインはもっと魅力的にしていく必要があることと
幸せを感じるのは華やか色彩であり
気持ちを高める明るい色彩が主流の北欧パターンは
人々を幸せにするのに欠かせないのではないかと
再度認識したことでした。
サステイナブルデザインと北欧の幸せを感じるパターンを
何とか結びつける術はないものかと思い始めています。