スカンジナビアン・パターン・コレクション裏話その3、始まりは三人展から


Photo: Photowall

前回は、ブロキガというブランドの版権を巡って

敵対関係で出会ったのが今のビジネスパートナーというところまで話しました。

その後の展開が敵対関係から別のものに変わっていったのは

私のブロキガへの想いが深かったことが理由かもしれません。

 

私はブロキガのキャラクターを使った商品展開に夢を抱いていました。

当初は本人たちがプロダクトを展開していましたが

自分たちで商品の品質を維持していくことが困難となり

ライセンスという形でさまざまなメーカーと商品化をしていくことになりました。

私は蚊帳の外になってしまったとはいえ、私の夢が別の形で実現していったのです。

その商品の可愛らしさに魅了され、商品化になった事実を素直に嬉しく思いました。

ライセンス契約になることで、実にさまざまな商品の可能性が広がるのです。

本人たちが商品開発を続けていたら、これほどいろいろなものは作れません。

ブロキガにとってライセンス契約は正しい選択だったわけです。


Photo: Brokiga

スティーナとアンナという姉妹の人懐こさも大好きで

ふたりともストックホルム在住のご近所さんでもあり

個人的な付き合いもあったわけです。

一緒に仕事をしなくなったからといって、疎遠になったわけではありませんでした。

もし私がブロキガというブランドも、

スティーナとアンナにもそれほど思い入れがなかったら、

版権が切れた時点で付き合いも終わっていました。

そうならなかったのは、彼女たちもブランドも

大好きという思いがずっとあったからでした。

輸入業者のアルコデザインは、

プラスライセンスを通して作られる商品を扱うことになり

ビジネスとしては続けていけることになりました。

私だけがビジネスから外れたわけですが

ブロキガの日本での行く末がとっても気になっていました。

 

そんなおり、2012年の10月に東京のスウェーデン大使館で

「ストックホルム発グラフィックとインテリアの融合三人展」が

開催されることになりました。

三人とは、ブロキガのスティーナ・ヴィルセンとアンナ・ヘーリング、

そしてスティーナの夫でクリエイターであるポンペ・ヘーデングレーンです。

スウェーデン大使館、スヴェンスク・フォルム、スウェーデン文化交流協会、

プラスライセンス&デザインTOKYOによる共催展です。

日本でこのような企画を行うのは私にとって憧れのできごとで

どれだけ羨ましいと思ったことでしょうか。

私に関われることはないだろうかと考えましたが、何もありませんでした。

秋にはいつも日本に帰っていますので、

展示会を見にいくことはできるな、と思っていました。

スティーナもアンナも私が展示会に来ることは歓迎してくれて

では東京で会いましょう、ということになりました。

 

三人展では、それぞれのクリエイターとしての作品展示や

「リトルピンク&ブロキガ」ブランドの作品展示、

家族連れの来館者にも楽しいひとときを過ごしてほしいという

クリエーターたちの願いから、子どもたちの遊びのコーナーも設置されました。

私はひとりの訪問者としてイベントに参加しました。

「三人展」では大使館内のオーディトリアムでセミナーがあり

そこでは「リトルピンク&ブロキガ」の絵本の紹介がありました。

日本語訳を担当したのは、スウェーデン出身のLiLiCoさんで、

本人自ら、翻訳された絵本を朗読されていました。

邦訳された絵本、今はもう出版されていないため、高額で取引されているようです。

 

「三人展」のためにスウェーデンから来日したのは、

スティーナとポンペの3人の子どもたちを含む6人でした。

イベントが終わったころ、私は名残惜しみながら会場に残っていました。

スタッフたちが一緒にご飯を食べにいくということになり

スティーナとアンナと面識のあった私にも声がかかりました。

そこでプラスライセンスTOKYO代表の今泉幸子さんとご一緒することになるのですが

スウェーデン人ばかりだったので、

私の参加はむしろ歓迎されたように記憶しています。

主催者側の元スウェーデン大使ご夫妻がタクシーを呼び

何台かに分かれてレストランに向かうことになりました。

元大使夫妻が選ぶ六本木に近いレストランは、

いったいどんなところだろうと期待に胸を膨らませていました。

 

しばらくタクシーに乗って着いたところが繁華街でした。

どこに連れて行ってくれるのだろうと思っていたら

着いた先はなんと、ファミレスの「天狗」でした。

うちの実家(東京都町田市)にもあるファミレスです。

六本木でなくてもどこにでもあるファミレスです。

目が点になっていると、スウェーデン人たちは思いの外楽しそうです。

テーブルにつくと、写真入りのメニューが配られました。

元大使夫人は「ここは私たちの奢りよ〜」と朗らかにいいます。

写真入りのメニューは日本語が読めない人たちには助かります。

また、スティーナとポンペのふたりの娘はティーンエイジャーで

いちばん下の男の子はまだ11歳です。

スウェーデンの子どもたちはそれはそれは偏食で

日本食のような食べ慣れないものは口に合わないでしょう。

高級レストランで出される料理はほぼ食べられないでしょう。

でもファミレスにはピザやパスタもあり、

子どもでも食べられそうなメニューも満載です。

元大使夫人が「バターコーンと餃子がオススメ」とよく知っているようです。

実際、子どもたちも含めて美味しい美味しいと食べていて

みんなそれは楽しそうで満足のようでした。

私と幸子さんは顔を見合わせてしまいましたが

みんなが満足しているなら、それに越したことはありません。

外国からのお客様だからといって高級レストランに連れていくより

ファミレスや居酒屋の方が返って喜ばれるということが分かりました。

その時の貴重な写真がありました。

 

私と幸子さんはひとあし早くお店をでて

ふたりで飲み直したのはいうまでもありません。

ここから、新しいビジネスの物語が始まるのでした。

 

このつっこみどころ満載の「天狗」での食事会があったことが、

ふたりにとってのいい循環油になった気がしています。

私と幸子さんの仕事への思いなど、

今まで抱えていたものを一気に吐き出したところから

新しいビジネスのアイデアが形になっていきます。

続きは次回(SPC秘話Vor.4)に。

 

 

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