私はスウェーデンに暮らして、今年で23年目になりました。
あっという間のようで、それなりにいろいろあったのを思い出します。
この国に暮らして、日本人とはまったく違うモノの考え方や行動に、
当初はいちいち驚いていたものでした。
それが知らないうちに身についてきているのを感じています。
いちばん身についたのは「頑張らないこと」です。
この国では「頑張ること」は美徳ではありません。
大変な思いをして頑張ることは、むしろよくないことなのです。
例えば、お客さまのために一生懸命お料理を作った時のことです。
口に合わないと食べてもらえなかったことがあります。
具合が悪くても無理して仕事をしたら、
休まないことを注意されたことがあります。
頑張るの意味合いが噛み合わないのです。
日本にいたころは、頑張ったことはそれなりに評価されたのに。
一生懸命作ったお料理は、多少口に合わなくても美味しいと食べてくれたり、
具合が悪くても仕事をするのは当たり前だったり。
頑張ったことが評価されない落胆は大きかったです。
逆に、頑張らなければ、きっとこんなに落胆しなかったでしょう。
ただ、今思うと、日本では頑張ったことを評価してもらっただけで、
相手に取ってはありがた迷惑だったのかもしれません。
また、仕事を頑張りすぎることで、自分の身体を壊していたかもしれません。
そこで頑張らない暮らしを実践してみると、これがすごく快適だったのです。
頑張らないから相手に期待しませんし、
自分ができる範囲でやるので、無理もありません。
もしかしたら、このあたりに北欧の人々の
幸せ度が高い理由があるのかもしれないと思いました。
スウェーデンには、「ラゴム/lagom」という、
「頑張らない」、ちょうどいい加減を意味する言葉があります。
スウェーデン人は「ラゴム」をよく口にします。
「ラゴム」は人によって異なるので、
自分の「ラゴム」を見つけることが、
自分にフィットした暮らしを見つけることになります。
長いこと北欧に暮らし、北欧の人々と一緒に過ごすことで、
自然と身についてきたように思います。
つい頑張ってしまう日本人が「ラゴム」を身につけるのは
簡単ではないかもしれません。
でも、この感覚がわかると、生きることがとても楽になります。
「北欧の、頑張らないラゴムな暮らし」を、
日々の暮らしの中から伝えていきたいと思っています。