日本の「ぼろ」に魅了される北欧のクリエイターたち

| 2021-12-06 | 0 Comments

2021年、日本の「ぼろ」展がストックホルムにやってきました。

「ぼろ」展では、東京の浅草のアミューズミュージアムで展示されていた、

江戸後期から昭和初期に東北地方で農民や漁民が使用していた

衣類や布類が展示されています。

「ぼろ」と聞くと貧しいイメージがありますが、

今ではルイ・ヴィトンやコム デ ギャルソンといった

一流ブランドが「日本のぼろ」をテーマにしたコレクションを発表し、

世界各地のクリエイターたちにも影響を及ぼしています。

環境に配慮される今の時代、

古いものの価値を高めるアップサイクリング精神の「ぼろ」は、

時代の先端を行く注目されるコンセプトです。

スウェーデンでの「ぼろ」展のサブタイトルは「Nödens konst」

「必要性のアート」という意味が使われています。

生活に必要だったことが、アートとして発展していったと表現しています。

「裂けたり、すり減ったり、ツギハギされたり。

でもすべて愛情を込めて修繕されています」。

厳しい環境の中、少ない資源で生き延びる術として

「ぼろ」が伝えていることです。

ぼろが発展した北日本の冬は寒く、

人々は歴史的に貧しい生活を送ってきました。

この土地では、農民や漁師の間で無駄なものを一切使わない、

女性特有の工芸品が発達しました。

 

衣類や布団などは、何世代にもわたって修理や補強が施され、

麻生地や着古した衣服、ぼろ布、リサイクルの糸などを

何層にも重ねて作られました。

ものを大切に使う生活の知恵として生まれた

「ぼろ」や「刺し子」が、

古いものを蘇らせるアートとして、北欧の人々を魅了しています。

長い間、「ぼろ」は日本の貧しい時代を思い起こさせる

恥ずべきものと考えられていましたが、

今では世界各地の博物館やギャラリーでアートとして見直されています。

実は私も「ぼろ」展がストックホルムに来ると聞いた時、

お金を払って見に行く価値を見出せずにしばらく行かないでいましたが、

たまたまチャンスがあって見学に行くことができました。

そこで驚いたのは、展示物そのものより、

この「ぼろ」に魅了されている北欧クリエイターたちでした。

彼らが「ぼろ」に感銘を受け、

アップサイクリングなデザインを思いついたり

詩や曲を作ったりしているのです。

 

展示会場では、「ぼろ」たちはガラス2枚の間に

ひとつひとつていねいに展示され、

最も美しい姿を見せていました。

ぼろぼろの野良着や、穴のあいた地下足袋などが、

白木の中にガラス越しに、壮大なアートとして展示されています。

説明文の白い文字がさわやかな印象です。

 

また、ファッションやサウンドアートなどを通して、

「ぼろ」を自分なりに解釈した

スウェーデンのクリエイターたちもいます。

スウェーデンの著名なデザインスクール、

ベックマンの卒業生によるファッションブランド「Rave Review」は

「ぼろ」からインスピレーションを得て

リユースの素材を使った作品を生み出し、

ハイエンドなアップサイクリングのブランドとして君臨しています。

古いブランケットと服を組み合わせたファッションは大きな注目を浴び、

数々の賞も受賞しています。

ブランケットなどを使った作品は

本場「ぼろ」と違って、かなりカラフルです。

 

「ぼろ」から派生したRave Reviewのファッションコレクションは、

古着をパッチワークのように組み合わせ、

新しい価値を生み出しています。

 

ファッション以外にも、

「ぼろ」にインスピレーションを受けた詩人や

ミュージシャンのサウンドアートなども発表されました。

このように、「ぼろ」展により、

さまざまな北欧クリエイターや

アーティストが影響を受けています。

この展示会場のデザインを担当したのは、

数々の受賞歴もあるスウェーデンを代表する

アーキテクトデュオのTAFです。

美しいガラス製の展示用キャビネットと家具をデザインし、

透明感のあるシンプルで洗練された会場で

「ぼろ」を最も美しい姿で展示しました。

会場の真ん中にはワークショップ用のテーブルがあり、

こちらもTAFによるセンスのいい空間です。

 

ロゴとグラフィックデザインを担当したのは

バンカーウェッセルです。

数々の受賞歴のあるグラフィックデザインスタジオで、

20年以上にわたって世界的に有名な美術館、

アーティスト、写真家と仕事をしています。

強力なビジュアル・アイデンティティーを提案し、

アートとビジネスを結びつけることに長けています。

そして、今回の展示会で私が最も感銘を受けたのは

Kölqvistが担当した「図録」でした。

図録の表紙のロゴは会場とは異なりますが、こちらもなかなかいい感じです。

「ぼろ」によく見られる藍色をメインカラーとし、

布製の表紙は少し糸がほつれていて「ぼろ」のイメージがより引き立ちます。

貧しい印象の否めない「ぼろ」が、

北欧に来てこんなに美しく表現されていることに大きな驚きと、

感動にも近い思いがありました。

貧しい時代の日本では、

少しでも美しく見せようという工夫があり、

それが今注目されているアップサイクリングの原点であり、

世界を魅了するクリエイティブであったことがわかります。

モノのあふれる今の時代に、

モノを大切に扱っていた日本の古き良き暮らしぶりに、

敬意を表したいと思います。

東アジア博物館「ぼろ」展

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Category: 北欧デザイン&インテリア

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