オーランド/Åland諸島をご存知でしょうか。
フィンランド自治区ですが、
住民のほとんどはスウェーデン系で公用語はスウェーデン語の
スウェーデンとフィンランドの間にある小さな島です。
2022年の今年、自治100周年記念を迎えています。
オーランド諸島は、複雑な歴史を持っています。
もともとフィンランドのひとつの地域だったのが
1155年にスウェーデンがフィンランドを征服して以降、
オーランドもスウェーデンへ帰属しました。
1809年にスウェーデンがロシアとの戦争に敗北して、
フィンランドとオーランド諸島はロシアに併合されました。
1917年のロシア革命を機に、
フィンランドがロシアからの独立を勝ち取ると
オーランド諸島ではフィンランドから離れて、
スウェーデンへの帰属を求める動きが高まりました。
スウェーデン系が多く、スウェーデンへの強い愛着があったからです。
ところが、独立したフィンランドは、オーランドがロシア支配時代に
フィンランド大公国に属していたという理由から
フィンランドへの帰属を主張しました。
これによってスウェーデンとフィンランドの間で
オーランドをめぐる係争が起こりました。
その解決に乗り出したのが、
1921年に結成された国際連盟であり、
当時の国際連盟の事務次官であった
かつての五千円札の顔になった新渡戸稲造氏です。
1921年にオーランド諸島のフィンランドへの帰属を認め、
その条件としてオーランドの更なる自治権の確約を求めた
「新渡戸裁定」が示されました。
フィンランドの国内法(自治確約法)として成立し、
1922年にオーランドの自治が確立しました。
そして今年は自治100周年を迎えています。
フィンランドとスウェーデンのNATO加盟で緊張感が高まる中
両国の真ん中にあるオーランドは、より緊張の強いられる場所にあります。
そんな中、オーランド自治100周年を記念して、
ストックホルムでも最も美しいといわれるアートミュージアム
オーランド諸島にあるアートコロニーの
スウェーデン初の展示会「海と島に注ぐ光」展が
5月14日より開催されます。
オーランド諸島のマリエハムン郊外、オーニングビーにある
あまり知られていないアートコロニーで制作された
オーランド諸島の景色などをモチーフにした作品や、
肖像画、コロニーでのライフスタイルなど、100点以上が展示されます。
ローカルでマイノリティーなアート作品が、
このように大きくスウェーデンで展示されるのは初めてのことです。
アートコロニーとは、日本語では芸術村と言われています。
ある特定の場所へアーティストが集まり、
お互いに切磋琢磨して、
それぞれの分野で活躍できるようになったものです。
北欧では、19世紀後半に各地でアートコロニーが設立され、
オーランド諸島オーニングビーのアーティストたちは、
美しい島の海と陸に注ぐ光の変化を表現したさまざまなアートを描きました。
アートコロニーでは、アーティストらが野外で絵を描き、
国境を越えた友情が生まれたり、恋愛に発展したり、
パーティーや仮面劇などがが催される場所となりました。
アートコロニー滞在中のアーティスト同士の親交から、
インスピレーションと強い表現力を特徴とする多くの作品が生まれました。
このコロニーでは、男性よりも女性アーティストが多数を占めており
同時代の他のアートコロニーとは一線を画しています。
そのためか、どこかやさしさや温かみの感じられる作品が多く見受けられます。
肖像画では、思わず引き込まれてしまうような表情の子どもなど
愛する人たちの肖像を描いたのだろうと想像してしまいます。
アートコロニーというコミュニティで生まれたアートは
ホッとさせてくれるような温かみにあふれた作品が多いように思います。
柔らかい光の注ぐアートをどうぞお楽しみ下さい。