毎年3月に開催される北欧アンティークフェア。
昨年はコロナ禍で5月に延期されましたが
今年は例年通り3月に開催されました。
世間はすっかりコロナ前に戻りましたね。
しかしながら、オープニングイベントのあった日は大雪に見舞われ
交通機関がマヒしたため、私も含めて多くの人が会場に行けなかったようです。
そのためか、翌日はかなりの混み合いでした。
アンティークフェアというと、訪問者の年齢がグッと上がります。
今年は初めてガイドツアーがあったので参加してみましたが
ほぼ高齢の人たちが50人くらい集まり、移動も大変なくらいでした。
今回の展示で面白かったのは、年代ごとのウェディングドレスです。
1800年代は民族衣装のようなドレスで、1900年になると白いドレスになります。
1800年代のウェディングドレス
1940年代のウェディングドレス
1970年代のウェディングドレス
そして今回、私が楽しみにしていたのは、
北欧ヴィンテージ誌Scandinavian Retroの編集長ヴィヴェカさんの
「アールヌーボーからスウェディッシュモダン」というセミナーです。
スウェーデンデザインの歴史を辿るお話しでした。
デザインがどう変わっていったかはとても興味深いところです。
1890年から1910年代に、曲線や花や植物など有機的なデザインで
ヨーロッパを中心に流行したアールヌーボー。
1910年から1930年代に、直線的で幾何学図形なデザインで
ヨーロッパやアメリカを中心に流行したアールデコ。
スウェーデンでもその影響を強く受けています。
スウェーデンらしいデザインが登場したのは1920年代で、
「Swedish Grace/スウェディッシュグレース」と呼ばれています。
1930年にストックホルムで開催されたモダニスト展示会は
建築、デザイン、手工芸品の全国展であり、
当時注目の建築家であったグンナル・アスプルンドが展示会を設計しました。
この展示会は、スウェーデンにおける機能主義の突破口となり
スウェーデンデザインが世界的に注目されるきっかけとなります。
「スウェディッシュ グレース」という言葉は、
1930 年のストックホルム展示会を見学した
英国の建築評論家Philip Morton Shand/フィリップ モートン シャンドが
スウェーデン人による洗練されたデザインを賞賛して表現した造語と言われています。
スウェディッシュ グレースは、アールデコのスウェーデン版でした。
基本的に形はシンプルですが、表面に美しい装飾が施されたエレガンスさが特徴です。
家具、ガラス、磁器、ピューターなどに見られるデザインは華麗で繊細で
高い技術力を持つ職人の手によって作られています。
1921年、オレフォシュ/Orreforsのガラス作品
“花火のボウル/Fyrverkeriskålen” by Edward Hald
そして、1930年代にスウェーデンでも流行した「フンキス/機能主義」。
フンキスを代表する建築家は、なんといってもグンナル・アスプルンド(1888-1940)でしょう。
フンキスはスウェーデンの住宅政策にも大きな影響を受け
日本でいう団地のような、機能的な集合住宅がたくさん建てられました。
デザインもミニマリストが特徴で、
特に家具はフンキススタイルが広まっていきました。
1928年に建てられたストックホルム市立図書館
設計はグンナル・アスプルンド
1928年に建てられたストックホルム市立図書館内部
ストックホルム市立図書館のために作られた椅子
そして、1940年ごろのスウェディッシュモダンへと繋がっていきます。
北欧デザイン黄金期のミッドセンチュリーのデザインはこのころに作られました。
今ではヴィンテージとしての価値をどんどん高めています。
スウェーデンを代表するスウェディッシュモダンといえば
下記の4名が有名です。今でも北欧で人気のデザインがこの時代にたくさん生まれました。
カール・マルムステン/Carl Malmsten (1888-1972)
ブルーノ・マットソン/Bruno Mathsson (1907-1988)
ヨセフ・フランク/Josef Frank (1885-1967)
スティグ・リンドベリ/Stig Lindberg (1913–1997)
そして現代へと繋がっていきます。
ミッドセンチュリー時代のデザインは本当に語ることが多いので、
またの機会に語ってみたいと思います。
アンティークフェアは、こんな時代の作品を一同に垣間見れて
本当に貴重なイベントです。
まだまだ知らない作品があったりして、毎回発見があります。
毎年価格の上がるヴィンテージ作品はなかなか手が出なくなりましたが
今回手に入れた戦利品は、コスタボダのパプリカです。
実は初めてみた作品でしたが、形のかわいらしさが気に入りました。
今でも現役のGunnel Sahlinの作品で、さまざまなフルーツのシリーズです。
少しずつコレクションしてみたくなりました。
スウェーデンデザインがどのように変化をとげ
「デザインは、みんなのもの」という考えになっていったか。
これもスウェーデンデザインの歴史と成長が関係しています。
私が最も伝えたい「デザインは、みんなのもの」というコンセプトについて
これから少しずつ紹介していきたいと思います。