今年も2月に無事にファニチャーフェアが開催されました。
今回も街中のデザインウィークとの同時開催となりましたが
今までに比べて、ちょっと異変がありました。
それは、毎回の常連であった北欧大手ブランドが、こぞって出展していなかったことです。
今まではストックホルム見本市の4つの会場を目一杯使っていましたが
今回の展示は2つの会場のみです。
規模的に、1月と8月に開催されるインテリアフェアFormexと変わらず、
ファニチャーフェアは、もやは北欧最大級とは言えないのでは、という印象です。
では、大手ブランドがどうしたかというと、
デザインウィーク期間に、街中にあるショールームを一般公開したのです。
確かに街中のショールームはとても充実していましたが
あちこちに点々としたショールームを回るのは、
2月の雪の積もる寒空の中、ちょっと大変でした。
そんな中でも、気になった会場での出展について紹介しましょう。
まずは、エントランスを飾るゲスト オブ オーナーの展示です。
イタリアを拠点として活躍する研究ベースのデザインスタジオ Formafantasma により
「木について語るなら、森について語るべき」というコンセプトの「読書室」が展示されました。
展示には、アルテックとFormafantasmaとのコラボレーションにより実現した
野生の樺を使用したスツール60が並べられました。
これは、木節や昆虫が残した跡などの自然な模様が特徴で
気候変動と森林の工業化の影響を強調したスツールです。
読書室のテーブルにはサステナブル、生態学、森林に関する厳選された書籍が並べられました。
映像も流され、訪問者は森についてじっくりと考えることのできる、まさしく読書室でした。
アルテックは今回は会場での展示をしない代わりにショールームを公開していました。
街中のショールームでは、スツールについての解説がありました。
自然な模様が残る木材を使ったスツール
アルテックのショールーム
会場の真ん中に大きく出展していた常連の大手ブランドは
Gärsnäs、BLÅ STATION、LAMMHULTS、Karl Andersonでした。
Gärsnäs
Blå station
Lammhults
Karl Anderson
昨年から出展している「INGRIDSDOTTER」は
デザイン業界に詳しいクリスティーン・イングリズドッターが
2021年に設立したブランドで
スウェーデンデザイナーのレジェンドであるヨナス・ボリーンの代表作である
「LIV」家具コレクションの復刻版を扱っています。
「LIV」は運河の水の流れや滴が投影された
丸みを帯びたラインが特徴的なヨナス・ボリーンの代表作です。
INGRIDSDOTTER/Jonas Bohlin
INGRIDSDOTTER/Jonas Bohlin
昨年も出展していたVerkは、コロナ禍に設立された新しいブランドです。
「Verk」は「仕事」という意味を持ち、
スウェーデン産の原材料のみを使用し、すべての家具をスウェーデン国内で製造しています。
設立者たちは業界での経験が豊富であり、その経験を組み合わせて、
耐久性、トレーサビリティ、デザイン性、機能性、いずれにも妥協することがありません。
Verk
Hemは、国際的に有名なデザイナーとコラボした家具をメインとしたブランドです。
欧州やアメリカなど、海外への進出に力を入れていて、日本ではアクタスが扱っています。
Hem
家具デザイナーAnki GneibとMia Cullinのプロジェクト「UNIVERSE」は
今回初めてファニチャーフェアに出展しました。
ふたりはインテリア建築や展示デザインなどのプロジェクトにおいて
数年にわたってコラボをしており、
「UNIVERSE」は彼女たちの初めての家具コレクションです。
彫刻的な家具は、格子状の球体上で微妙にバランスを取った水平面を特徴とし、
重さと軽さ、堅固さと平面の層の間に、魅惑的な相互作用を表しています。
接着剤や釘などを一切使わず、木材のみを組み合わせています。
「UNIVERSE」は現在進行中のプロジェクトで
新たな表現や素材を探求しながら、コレクションが拡大し続けています。
Universe
もうひとつ、若手デザイナーの登竜門であるUng Svensk Formの2023年に選出され
さまざまな賞を受賞した若手デザイナーのブランド「SLOYDLAB」を紹介しましょう。
「SLOYDLAB」は、歴史とフォークロアを現代のデザインに組み込むビジョンのもと、
Matilda Hunyadiによって2016年に設立されました。
フォークロアとモダンデザインを調和した家具が話題を呼び、
2021-2022年にかけて、デザイン賞や奨学金の数々を授与した
次世代を担うデザイナーとして、今後の活躍が期待されているブランドです。
SLOYDLAB
今回の出展で目を引いたのは
ダンボールなどの廃材を利用したり、昨年から同じ素材を使うなど
環境に配慮した展示です。
廃材とはいえ、魅力的に展示しているところはさすがです。
廃材を使ったデザインスクールの展示。会場はグリーンハウス
段ボールを使った書籍ブース/konst-ig
昨年もこれからも、展示に同じ材料を使うと書かれている/mitab
そして今回もいくつか目についた、環境にやさしい素材を使った出展の数々。
カラフルな苔を利用した吸音材
リサイクル素材を使った家具
今回会場を回って感じたのは、大手ブランドがこぞって出展しなかった代わりに
個人レベルのブランドによる小規模での出展が目立ったことです。
地元のものづくりに注目し、地元のデザイナーと工芸品をつなげたり
地元の知識人たちでネットワークを作ったり
国産の素材を国内製造するなど、より国内での充実に力を入れた展示も見られました。
コロナがあけてから、海外への進出よりも
国内での充実に向かっているようです。
そんな事情もあり、海外相手にビジネスをしている大手ブランドは
会場での出展を控えたのかもしれません。
モノが移動する輸出入はサステナブルではないと言われるようになり
モノではないものを輸出入する動きも出てきているようです。
これからは、そんなブランドに注目していきたいと思っています。
最後に、簡単に会場をまわった映像をお届けします。
少しは会場に行った気分になりますでしょうか。