ミナペルホネン「デザイン = メモリー」展 in ストックホルム

憧れのブランド「ミナペルホネン」さんの展覧会が、ストックホルムで開催されています。

場所は、スウェーデンで最も権威のある国立美術館です。

キュレーターは元国立美術館長で、

現在フィンランド文化基金のCEOであるスザンナ・ペッテルソンさんと

30年以上フィンランドの文化イベントに関わっている

文化プロデューサーの迫村裕子さんです。

ミナペルホネンさん、ブランド名と作品は知っていたのですが

スウェーデンではあまり見ることができず

今回初めて、たくさんの服を見ることができて感激です。

オープニングの前日に開催されたプレスリリースでは、

キュレーターのスサンナさんの質問に日本語で答え

それを迫村さんが英語に訳して説明しました。

皆川さんは、19歳の時に初めてストックホルムを訪れ、

国立美術館の近くにある船のユースホステルに泊まり

毎日のように美術館に通ったそうです。

そんな場所で今こうして自分のブランドの展示会ができるのは

なんだか夢のようです、と語っていました。

「デザインは感情を生む。感情は記憶となる。

記憶からアイデアが生まれ、アイデアはデザインに還る。

デザインと記憶はひとつの循環の中にあり、

それぞれは異なる状態の同じエネルギーであると私は信じている。」

という考えが、この展覧会の核となり、循環の流れとなっています。

会場に入ると、まずは天井から吊るされた

アイコンとなるテキスタイルが目に入ります。

そして壁一面に並べられた服の数々。

服ひとつひとつに皆川さんのメモリーが残っていて

その服を作った時代が蘇ってくるそうです。

プレスで会場入りした私たちは、

光栄にも、皆川明さんの口から直接会場の説明を受けることができました。

メイン会場のサイドの小部屋にはそれぞれテーマがあり、

仕事に使うペンやスケッチなどが展示されたアイデアの部屋や

人気のデザイン「タンバリン」ができるまでの映像、

タンバリンを使った作品が展示される部屋など、

ミナペルホネンの作品を楽しめる部屋がいくつかあります。

アイデアの展示

タンバリン生地の展示

パッチワークの展示

生地のひとつひとつがていねいに作られていて

余り生地といえど捨てることはありません。

余った生地は、小物に使ったり、パッチワークに使ったり

ボタンに使われるなど、最後までていねいに使い切ります。

ボタンになった生地

そして今回の目玉でもあったのは

スウェーデンを代表する往年のデザイナー

インゲヤード・ローマンとのコラボレーションです。

左からインゲヤード・ローマン、皆川明さん、キュレーターのスザンナ・ペッテルソン

インゲヤード・ローマンの得意分野はガラスと陶芸です。

日本の有田焼や木村硝子ともコラボレーション経験のあるローマンさん。

テキスタイルは初めてのことで

知識も経験もなく、とても心配だったというローマンさん。

そんなローマンさんに対して、才能のあるデザイナーは

素材が変わってもその才能を発揮できるので

何も心配はしていなかったという皆川さん。

出来上がった作品は、白と黒が鮮明に表現されたテキスタイルです。

インゲヤード・ローマンがデザインしたテキスタイル

シンプルを極め、白と黒がトレードマークのローマンさん。

有田焼でも、マットな白と黒のテーブルセットをデザインしています。

2016/Arita, Photo Yasunori Shimomura

ローマンさんがデザインしたテキスタイルは、

森に茂る木々の半分に雪が積もっている様子と

スノウボールと、川の流れです。

左は雪が積もった木々がモチーフ、右はスノウボール

全くの混じり気のない白と黒のテキスタイルを作るのにいちばん苦労したという皆川さん。

特にスノウボールの白い部分は、雪の質感がでるように何度も試作したとのこと。

白や黒の部分に一点の混じり気もない、鮮明な白と黒が表現されています。

そして、皆川さんがじっくり見てほしいと言っていたのが「メモリールーム」。

ここには、何人かの人の服に対する記憶がメッセージになっていて

それぞれの服を着た年齢とその思い出が綴られています。

皆川さんご自身の奥様の記憶のある服もありました。

メモリールーム

家具やテーブルウェアになったミナペルホネンのデザイン

メイン会場のいちばん奥には、迷彩柄のテキスタイルが飾られています。

これは、皆川さんなりの平和へのメッセージが込められていて

迷彩柄をひとつひとつハサミで切っていくと、その下から花柄が現れます。

迷彩柄を全部着ると花柄のテキスタイルになるそうです。

戦闘服である迷彩柄が、平和のシンボルである花柄になる、

そんなところに、平和への願いが込められていて

皆川さん自らがテキスタイルを切って見せてくれました。

直接平和を訴えるより、自分なりの伝え方をしたかった、と皆川さん。

そして今回の注目となったのは、皆川明さんによるライブペインティングです。

オープン初日から3日間に毎日会場にいらして、大きなパネルに絵を描かれました。

ライブペインティングでは、自分でも何を描こうとしているのかわからないそうです。

外を散歩していた時に、氷が流れていて、その表情が印象的だったので

もっと白が乗っかっていくかもしれない、とのこと。

全体的に黒い絵が、もっと白くなるかもしれないし

3日間で20時間の間でどうなるのか、自分でも行き先がわからない、

少し不安を持ちながら進みたいと思っている、

どうなるかわからない不安があると、手が生きている状態で

自分とずっと向き合う状態が続くので、それを楽しみたい、とのこと。

3日が過ぎたあたりでもう一度みてほしい、と言われたので、毎日通いました。

ライブペインティング前のパネル

ライブペインティング中の皆川さん

ライブペインティング終了

あまり手を動かしすぎると壊れてしまいそうだから、

これくらいで終えた方がいいかな、とのことでした。

皆川さん、お疲れさまでした。

3日間毎日通い、皆川さんともお会いし、何度か直接お話しもできて

とても貴重な時間でした。

私の書籍「スウェーデン100」を紹介する機会もあり、

ご興味を持たれてみたいだったので、献本いたしました。ありがたや。

今回のミナペルホネンさんの展覧会、8月まで続きます。

国立美術館の年間パスポートを買ったので、

まだまだ何度も見にいく予定です。

最近ほしい服が見つからず、何を着ていいかわからないなと思っていた今日このごろ。

「服は長く身につけることで記憶との対話が可能になります。

流行を追ってばかりいると、記憶を貯めるものにはなれません。

そのように、服に記憶が入っていくことこそが大切です。

物質としての洋服に価値があるのではなく、

人がそれを着た時の記憶が洋服に重なっていくこと、

それこそが洋服の価値であり、それを感じてほしいと思っています。」

というお言葉が身に沁みました。

皆川さんのデザインは、インスピレーションが

一度自分の体験として記憶になり

その記憶が空想に広がり、その風景をデザインにしている、といいます。

その空想の中に、たくさんの皆川さんの記憶が含まれる

そのデザインが多くの人々を魅了しています。

私も必ずミナペルホネンの服を手に入れて

記憶を残していきたいと思いました。

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