スウェーデン暮らしも15年を超えました。時間が経つのは本当に早いですが、思い返せばいろいろなことがあったと思います。スウェーデンスタイルを起業したきっかけは2005年に「北欧スウェーデンの幸せになるデザイン」を出版したことですが、今年は10年目となりました。そのころから、スウェーデンのデザインを日本にプロモーションしたいという姿勢は変わっていません。ただし、その伝え方はずいぶん変わってきているように思います。
「北欧スウェーデンの幸せになるデザイン」は10年経った今でも通用する内容がいくつかあります。例えばそのころはまだあまり日本で知られていなかったリサ・ラーソン(本書では現地語に近いリサ・ラーション)さんを紹介していますが、当時はこんなに日本で有名になるとは思いもよりませんでした。2002年のストックホルムファニチャーフェア、グリーンハウスに出展したnendoについても軽く触れていますが、10年の時を経て、世界的なデザイナーへと飛躍したことは、日本人としても誇らしいことです。
本書でも紹介しているイケア、スヴェンスクテン、ティオグルッペン、世界遺産「森の墓地」など、日本でも少しずつ認知されるようになりました。本が出版された2005年はイケアが日本に進出の準備をしていたころであり、今イケアが日本で大きく展開していることを嬉しく思っています。
日本から遠いスウェーデンは、北欧という呼び方の方が日本では馴染みがあるようです。現地にいますと、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、ノルウェー、アイスランドといういわゆる北欧は、それぞれが異なると思っていますが、似ていることが多いのも確かです。せっかくスウェーデンに暮らしていますので、できるだけスウェーデンの生情報を伝えたいと思いますが、内容が偏ってしまって伝わりにくいのかもしれません。
とはいえ、私が最も伝えたいことは、当初からひとつも変わっていません。「グッドデザインをすべての人に」というスウェーデンデザインの発想です。スウェーデンには、日常生活のあらゆる場面にグッドデザインがあふれています。グッドデザインとは、美しくて使いやすく、全ての人々の生活環境をよりよくするためにあります。一部のトレンディな人やお金のある人の付加価値のためにあるのではなく、共有価値として、あらゆる人のためのものです。平等精神を重んじる社会と同様に、グッドデザインによって全ての人が公平に幸せになることが望まれています。
「北欧スウェーデンの幸せになるデザイン」出版の理由も、この発想を伝えたかったからです。福祉や環境の先進国として知られるスウェーデンですが、デザインも気軽にだれもが楽しめるように配慮されています。水や光のように、いつでも、どこにでも、グッドデザインに出会えます。
本書の最後にある1845年から2005年までの「スウェーデン・デザインの歴史」も読み返してみると面白いですね。スウェーデンのデザインイヤーであった2005年で締めくくられていますが、それから2015年までも、デザイン界にはいろいろなことがありました。今また、スウェーデンデザインについてまとめてみたくなってきました。