出典:Formex
今週は北欧インテリアフェアFormexが開催されています。
コロナ禍で開催会場であるストックホルムメッサは患者用の施設となり
3月から全てのイベントが中止になっています。
コロナは少し落ち着いてきているとはいえ
まだ収束したわけではありません。
50人以上が集まるイベントが制限されているスウェーデンでは
トレードフェアはほぼ中止になっています。
その代わり、今回のFormexは小規模での開催と
オンラインセミナーとなりました。
ストックホルム市内の王立公園にある
Volvo Studioでトレンド展示とポップアップショップが開かれています。
会場では、最優秀若手北欧デザイナーNovaに
ノミネートされたデザイナーの作品とプロフィールも展示されています。
オープニングでは、最優秀若手北欧デザイナーNovaの受賞者が発表されました。
受賞したのは、29歳のアイスランド人デザイナーValdís Steinarsdóttirです。
アイスランドからオンラインでのインタビューとなりました。
Valdís Steinarsdóttirはアイスランドデザインスクールを卒業し、
実験デザイナーを自称して有機素材のリサイクルに焦点を当てています。
食肉となる動物の屠殺後に、骨や皮膚などの貴重な原材料が
無駄になっている現実を打開するプロジェクトを立ち上げ
アイスランド・イノベーションセンターなどの
研究者とともに新素材を開発しています。
動物の骨から取った強度の高いジャストボーンと
動物の皮膚から作ったバイオプラスチックスキンという
2つのまったく新しい素材を開発しました。
ジャストボーンは、動物の骨から作られた
MDF程度の強度を持つ天然素材で
セラミックと同様に使うことができます。
これは、まだ見出されていない可能性が
現在の環境に隠されている一例です。
使い慣れた素材をさまざまな視点から探索することで
新しい可能性を見つけることができます。
バイオプラスチックスキンは、
動物の皮から作られた肉用の生分解性パッケージです。
動物の皮はしばしば食肉産業の副産物と考えられています。
肉を消費する場合、屠殺された動物の全てを利用し
地球への汚染を少なくすることがわれわれの責任です。
このプロジェクトは、広く普及しているプラスチックの
過剰使用の問題にも対応しています。
毎日大量のプラスチックパッケージが捨てられ
最終的には埋め立て地や海に廃棄されています。
彼女の目的は、食品産業、特に食肉産業における
プラスチックの使用を減らすことです。
肉の消費と過剰なプラスチックの使用は危機に瀕しており、
社会が消費システムを考え直す必要があります。
Valdís Steinarsdóttirは、食肉業界に対して意義を申し立てています。
「大規模な畜産ではなく、
小規模な畜産にするべきです。
私たちは肉を過剰に生産しているため、
特にアイスランドのような小さな島国では、
資源の管理についてもっと真剣に考える必要があります」
美しいデザインについてどう思うか、という質問に対しては
「その背後にあるストーリーを知り
より深い独特な意味を持つ時に
そのデザインが美しく見えてきます。
製造工程も美しいと思います。
見た目を美しくする努力は悪いことではないですが
デザイナーはもっと社会に対して影響力を持つべきです。
私たちデザイナーは、さまざまな方法で
社会問題を指摘することができるはずです」
と答えています。
Novaの審査委員たちは、社会問題や環境問題の
解決策を見つけるデザイナーとしての視点と
食肉となる動物の骨などの貴重な原材料が
無駄になっている現実を打開するプロジェクトを高く評価し
彼女を最優秀若手北欧デザイナーNovaに選びました。
私にとっても「美しい、よいデザインとは何か」
という思いがずっとありました。
最近のデザインはワクワクするものがなく
昔のヴィンテージなどの方が
ワクワクするものが多いと思っていましたが
時代はもうワクワクするものよりも、
社会問題や環境問題を解決するデザインが求められています。
そのストーリーやプロセスを知ることが
ワクワクするデザインとの出会いであることに気がつきました。
これからは、そのような視点で
新しいデザインを見て行きたいと思います。
Valdís Steinarsdóttirのウェブサイトはこちらです。
(しかしアイスランド人の名前はどうカタカナにしていいかわかりません)