©Gustavsbergs Porslinsmuseum/Värmdö kommun
2016年は、北欧のミッドセンチュリーに活躍したアーティストとして有名なスティグ・リンドベリの生誕100周年です。その皮切りのリンドベリ展がグスタヴスベリ博物館で5月末から開催されます。ミッドセンチュリーのヴィンテージでも人気の高いリンドベリ。その個性的でモダンなデザインは、半世紀経った今でもまったく衰えることなく、むしろますます人気上昇中です。
そもそもリンドベリはどんな人だったのでしょうか。リンドベリの正式名はFrederick Stigurd Lindbergですが、通称はStig Lindbergでスウェーデン語読みはスティグ・リンドベリです。1916年8月21日にスウェーデン北部のウメオという街に、リンドベリ家の5番めの子供として生まれました。スウェーデン最高峰の美術大学コンストファック/Konstfackで学び、1937年から1940年にグスタヴスベリにてウィルヘルム・コーゲの元でセラミック製造に関わりました。 1941年に、リンドベリの初めてのセラミックが世間に公開され、第2次世界大戦後のスカンジナビアモダニズムとして世間に広く認められるようになりました。1953年に発表された美しいフォルムの花瓶Pungoを含む彼のセラミックは、スカンジナビアデザインの典型として親しまれるようになりました。
Pungoシリーズ
ブラウンのストライプが特徴のスピサリブ/Spisa Ribbは、グスタヴスベリ工房が1955年にスウェーデンのヘルシンボリで開催されたH55という博覧会に出展する、テルマという耐熱シリーズと組み合わせるテーブルウェアとして発表されました。
スピサリブとテルマ耐熱シリーズ
リンドベリのシリーズとして最も有名なベルサ/Bersåは1960年から1974年に販売され、北欧の一般家庭にテーブルウェアが普及した大きなきっかけとなりました。ベルサは葉脈をはっきりと描いたグリーンの葉っぱがならんだモチーフが特徴で、このようにテーブルウェアに大きなモチーフを描いたものは当時は斬新でした。1962年に発表されたプルヌスなど、特徴的なリンドベリのデザインは人々に強い印象を与え、すべてのシリーズがたちまち注目を浴びることとなりました。
リンドベリのベルサやプルヌスなどのシリーズが販売された1960年代は、テーブルウェアといえば6客以上をセット売りするのが通常で、テーブルウェアはお客様をもてなすための特別な食器という考えが一般的でした。そこにグスタヴスベリ社から、自分のお気に入りを揃えることをコンセプトとした、2つ入りの小分け売りが始まり、一般家庭の女性たちの心をつかみました。
1960年代のグスタブスベリのポスター
ベルサのシリーズ
プルヌスのシリーズ
ベルサとプルヌスはカップ&ソーサーやプレート以外にもさまざまなテーブルウェアが発表され、今ではヴィンテージとして高値をつけています。バターケースやお鍋まであり、キッチンがこれらのシリーズで埋め尽くされていた様子が目に浮かぶようです。
このころは手描きでモチーフを入れていたため、その後に普及した食器洗い機を使ってしまうととたんに色あせてしまいましたので、色の薄くなったヴィンテージも数多く見かけます。手洗いでていねいに使われた状態のいいものだけが、今でも高値で取引されています。
スティグ・リンドベリは、ひとりの人間がものを作る場合、その作品に責任を持つ意味で、作品にはサインを入れるべきという考えの持ち主でした。彼は自分の手描きによる作品には必ず裏面にサインを記しています。手とGの文字が入っているのが工房で作られた作品という意味で、青い文字で書かれているのがリンドベリの作品を表しています。
1937年から1982年までのリンドベリのサイン
ストックホルム郊外にあるグスタヴスベリ工房では、2000年代からリンドベリの復刻版テーブルウェアを製造しています。現在でも1960年代当初と同じ手仕事を含めた方法で、復刻版が作られています。アジアなどの工場で大量生産される大手の北欧テーブルウェアメーカーが多い中、今でも当時の製造方法を続けてスウェーデンで生産している大手ブランドは、グスタヴスベリ社だけと言えるかもしれません。
グスタブスベリ工房の入り口に掛けられているリンドベリの作品
スウェーデン発のオンラインショップ「スカンジナビアン・デザインセンター」では、グスタブスベリ商品の仕入れの準備をしており、入荷は5月末を予定しています。商品サイトは下記の画像をクリックしてご覧下さい。グスタブスベリ工房で製造された磁器に手作業でモチーフを入れてテーブルウェアが作られているため、ひとつひとつの作りが異なります。そのような手作り感もどうぞお楽しみ下さい。下記の画像をクリックすると、サイトリンク(英語)が開きます。