
スウェーデン西海岸は、ヨーテボリ(Göteborg)を中心に、多くの美しい小さな島々が点在しています。
これらの島々は「ボフスレーン地方の群島(Bohusläns skärgård)」と呼ばれ、
自然が豊かで、夏になると多くの人がバカンスやリトリートのために訪れます。
その群島にある小さな離島「Lövön(リューヴォン)」で、車も商店もない静けさの中、
心と体を整えるリトリート合宿に参加してきました。
リトリート合宿の主催はローフードシェフであり、
アロマや自然療法の知識も豊富なカスリーンさんと、
クンダリーニヨガの指導者のオーサさんです。
クンダリーニヨガとは、体内に眠るエネルギー(クンダリーニ)を活性化させ、
精神的な成長や変容を目指すヨガです。
瞑想、マントラ、呼吸法を組み合わせた実践を通じて心身のバランスを整え、
自己理解を深めることを目的とします。
ふたりが提供するのは、ただの「休暇」ではありません。
本来の自分に立ち返る時間であり、テーマは「食・動・静」のバランスです。
私たちは、ストックホルムからヨーテボリまで車で行き、リューヴォン島へ渡る港の近くに車を停めました。
島には車では行けないため、車を置いて行くしかありません。
船は1日に2回しか運行しない船に乗り、15分ほどで、西海岸の小さな宝石のようなリューヴォン島に到着しました。


島に到着したとき、港で出迎えてくれたのはワゴンと、にこやかなスタッフたち。
ワゴンにスーツケースを乗せて、私たちは滞在先まで歩いて行きました。
舗装されていない道や、静かな森の中を歩いて行くと、やがてヨガ講師のオーサさんが所有するサマーハウスにつきました。

島での生活では、水が不足しているため、毎日シャワーを浴びることができません。
日本人としては、毎日お風呂に入れない、シャワーを浴びれないというのは
ちょっと考えられないこと。
でも、郷に入っては郷に従えということで、何とかやってみることにしました。
スマホも時計も置いて、風と岩と植物とともに生きる時間。
海での塩気を肌に残しながら、星空の下で眠るこの感覚は、日常とは全く別のものでした。

朝はヨガや瞑想から始まり、昼は近くの海で泳いだり、森の中で深呼吸したり。
ゴングバスの音に包まれながら、心をほどく時間もありました。
そして、すべての食事はグルテンフリー・シュガーフリー・ヴィーガンのローフード。
目にも美しい創作料理の数々は、味覚だけでなく五感すべてを目覚めさせてくれるものでした。
印象的だったのは、ワークショップでの料理体験。
単なる「学び」ではなく、それぞれが
自分自身を慈しむための時間として用意されていたのです。
空白の時間も大切にされていて、
「ただそこにいる」ことの大切さを思い出させてくれました。








朝食前の毎朝のクンダリーニヨガは初めての体験でした。
日常的に通っているスポーツジムでもヨガは体験していますが、
ポーズと呼吸法に「マントラ」と呼ばれるサンスクリット語の音節を組み合わせた、
瞑想要素が強いヨガは、身も心もリラックスし、体内エネルギーを感じました。
今回の体験で印象深かったのは「ゴングバス」です。
身体を水に浸すバス(bath)のように、音の波に全身を浸すヒーリング法で
大きなゴングを使って発せられる深い音の響きが、空間全体を包み込み、
まるで音に“入浴”しているかのような感覚になりました。
ゴングの鳴り響く音がこわいと苦手な人もいるようですが
私はその音に包まれて、時間が止まったような、夢の中にいるような感覚を味わいました。

今回のリトリートを主催したカスリーンさんは、
エッセンシャリー・ロウ/Essentially Rawを運営し、
ローフードシェフとして、現在は南スペインに暮らしながら
夏の間はスウェーデン各地で活躍しています。
カスリーンさんはアメリカでローフードシェフのディプロマを取得し、
ローフードの料理本を出版して、今はスペインのコスタ・デル・ソルで暮らす60代の女性です。
彼女の人生そのものが「新しい選択はいつでもできる」と教えてくれます。


このリトリートには、豪華さも完璧さも必要ありません。
あるのは、自然のリズムと、少しだけの勇気。
日常を離れ、自分とじっくり向き合いたいとき、この島はきっと、その入り口になります。

